【寒いと言って服を着る動物はいない】
あたり前のことですが、人間はロボットではありません。
増してやロボットは人間が考え、作ったものですから、稚拙なものです。
ところが、カロリー収支計算や栄養素の量、薬剤の量など、あたかも機械やロボットににコマンドを与えるかの如く、人間を硬直したシステムとしてとらえ、対策を練っています。
自然の叡智が生み出した「人間」をロボットになぞらえてはいけません。
先ほど、なぜ動物は人間のようにデブらないのか、ということに疑問を投げかけてみました。
その延長線上で、もう一歩、核心に迫るための事例を考えてみます。
我々人間は、生まれた直後の15年~20年で急激に変化し、赤ん坊のサイズから比べると、あっという間に巨大化してしまいます。
このことを「カロリーの摂りすぎで巨大化した」などと考えたことはありますか?
もちろん無いと思いますし、また「激しい運動をして発達した」と考えることも無いでしょう。
我々が「成長」と呼ぶ現象では、摂取栄養素の量や、エクササイズの量から類推される因果関係とは、遥かにかけ離れた次元で、人間の身体が劇的に変化しています。
人間のDNAに限らず、あらゆる生物のDNAには、カロリー収支やエクササイズなどといった「機械論」的なインパクトからすると、数マグニチュードの上の抜本的なチューニングを司るキーが並んでいます。
「肥満」を自己管理能力のせいや、努力不足のせいにするのは、本質を隠すためのデマです。
肥満の本質的ファクターは何個かありますが、結局は内分泌系のかく乱(エピジェネティクス)であり、これは代謝均衡ポイントのズレを意味します。
時間が無くなってきたので端折りますが、肥満解消(ゲノム特定)のカギになると考えられているのが、低酸素状態と寒冷状態です。
例1:低酸素
40万人を対象にしたメタ解析によると、海抜ゼロメートルの高さに住む人々は、高地に住む人に比べ4倍~5倍も肥満になりやすい。(Dr. Jameson Voss, 米空軍)
例2:少し寒い状態
10~15分間、寒さに耐えて震えることは、1時間適度なエクササイズした時と同等のイリシン上昇をもたらす。(Garvan Institute of Medical Research)
これらの例から思い当たることも多いと思いますが、特に著名なのが、低酸素状態での食欲欠乏と体重減少。
低酸素状態では、即座にレプチンが上昇し、またレプチン受容体も増加します。空腹感が無くなるため体重はすぐに減ります。筋発達は停止し、栄養素調達のため徐々に分解されます。
筋発達にはよくありませんが、無理無く野生を呼び覚まし、ケトーシス方向に傾けるダイエットとして注目されるでしょう。
例2に関して。ユージン・サンドウは毎朝トレーニング前に冷たい水を浴びていたとのことです。
人間は服を身にまとう動物になって肥満したのでは、と感じることもしばしば。
(じゃあまたね)
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