正常な理解の邪魔
分子栄養学では、もっぱら抗酸化が語られるように思います。
ですが、酸化・抗酸化は均衡が保たれるべきものです。
厳密には、抗酸化物は酸化されることが仕事ですから、そのどちらか一方だけを良く言うことは変だ、という感覚が無いことは、正常な理解にとって障害です。
「メガ〜」が与える誤解の延長線上で「酸化ダメージ」や「アンチオキシダント」といったコンセプトから受ける、間違った印象は「抗酸化」がまるで貯金のように、プラスならプラスなほど良い、というものです。
例えば、多くのがんはグルタチオンなどの抗酸化物で身を守って増殖して行きます。
運動することは酸化ですから、じっとすることは抗酸化です。
活動しないこと(抗酸化)が身体に良いと言う人はいません。
巷で言われている「抗酸化」全肯定のイメージは間違いです。
抗酸化サプリが威力を発揮するのは、酸化と抗酸化の両方をブーストするからです。
比喩的表現をすると、身体システムは、抗酸化物を使い果たすところまで酸化を容認するため、抗酸化物を増やすと酸化もより多く可能となるわけです。
免疫システムは、外敵に酸化ダメージを与えて退治しますから酸化力が重要となります。
高い酸化キャパシティ(免疫能力)を保つには、多くの抗酸化物質が必要というわけです。
この一例だけ見ても、酸化と抗酸化のどちらか一方を良く言うのは正しくないということが分かるかと思います。
実際には、実像と巷の言説との開きは天と地以上にあります。
この問題の根本は、分子学的な捉え方を端緒とします。
つまり例えば、水をH2Oとして捉えた場合には、水道の蛇口から出てくる水と、身体に含まれる水分が同じモノになってしまうということです。
十人のクローン集団と、千人のクローン集団、一億人のクローン集団を比較する場合、それぞれの集団の特性や能力は、個人(=分子)の特性の総和から遠く離れたものとなるでしょう。
炭素が、炭だったり、炭素繊維だったり、ダイヤモンドだったり、グラフィーンだったりするのが現実です。
まだまだ話は始まったところですが、紙面が尽きたようです。
続きはまたいつか書きます。