日本のフィットネスを盛り上げよう！ 良質のプロテインをプレゼント！ 堀江俊之

※このニュースレターは縦に長いですから、途中で途切れていることがあります。最下部に（続きを読む）的なリンクがある場合がありますのでお見逃し無く。また、いつも時間に追われてろくに推敲も出来ないまま送信しております。誤字、脱字、等ふんだんにあると思いますが、ご容赦ください。

今週はカタボリズムの重要性について。

■ 決定的なトラウマ

ボディビルダー、特に、コンテストでタイトルを獲るようなボディビルダーは大抵の場合、非常に知識が豊富です。

エクササイズや生化学の知識はいうまでも無く、それらの知識を得る過程で副次的に摂り込んだ様々な薀蓄の量も膨大です。

筋肉は一夜にして巨大化しません。

来る日も来る日も、トレーニング、食事、休養、栄養のケアを積み重ね、それを何年か継続しなければなりません。

多くの事を犠牲にして築き上げた、血と汗と涙の結晶であるハード・マッスル。

しかし、いくら手塩に掛けた筋肉であろうとも、森羅万象は何ら気に留めません。

ケガや病気で少しの間、筋トレのルーティーンから離れると、あっという間に筋肉は無くなってしまいます。

実際には、筋肉はしぼんでいるだけで、ルーティーンを再開すると、比較的短期間で元の状態に戻るのですが、それでもそのしぼんでゆく過程が、耐え難い精神的苦痛をもたらすことは間違いありません。

そういった筋量減少に対する重大な喪失感は、ボディビルダー達に、決定的なトラウマにも似た認知バイアスを叩きこんでいます。

これは第三者の見地に立たないと見えないかも知れません。

だから膨大な知識量にも関わらず、ある一点においては、忌み嫌うという状況を通り越し、「完全否定」のメンタリティがあります。

■ 『私の屍をバルクに埋めて欲しい』

ボディビルダー達には、筋量増大への果てしない欲望があります。

その欲望に駆られ、若くして命を落とす求道者は絶えることがありません。

『私の屍をバルクに埋めて欲しい』

既に40年以上も前に、彼らの生き様を、この一行に集約させたのは、故・松山令子女史です。

貴方の存在理由(レゾン・デートル)が、命よりも大切なのであれば、誰もそれを覆すことは出来ないでしょう。

ボディビルダー達にとって、アナボリズムは至上命題であり、カタボリズムを奨励することは、キリスト教徒における「踏み絵」と同義であると言えます。

ところが、このカタボリズムは、アナボリズムと同じくらい、筋発達にとっても長寿にとっても大きな意味を持っていることが、現時点では動かしがたい真実として明らかになって来ています。

■ 筋肉が発達し難いのはナゼ？

どれだけトレーニングしても、食べても、祈っても、筋肉は貴方の望むようには発達しません。

それどころか、トレーニングを含めたルーティーンを休止すると、たちまち元のサイズに戻ってしまいます。

何故、こんなにも無情なのでしょうか？

それは貴方の身体が、必要最小限の筋肉しか必要としていないからです。

ウェイトトレーニングという名の外圧に対抗するため、やむをえず一時的に適応して発達しますが、外圧が無くなれば、適正筋量に戻るというわけです。

筋肉は必要以上にあると、それだけエネルギーを消費してしまいますから、進化の過程で、常に必要最小限にリセットされるよう進化してきたわけです。

リセットされずに筋肥大が継続されてしまう種があったとすると、その種はエネルギー不足で餓死するのでしょう。

さて、ボディビルダー達が欲して止まないアナボリズム。

このアナボリズムにおいて、どのような理由でカタボリズムが重要と言えるのでしょうか？

■ 人類を蝕む最大因子

以前のニュースレターで紹介した通り、喫煙は毎年毎年、第二次世界大戦における米国人犠牲者数を上回る人的被害を米国にもたらしています。

その人的被害を数倍のマグニチュードで上回るのが「肥満」による悪影響です。

肥満が何故、あらゆる疾患の原点になるのでしょうか？

肥満は癌においても、既に最大の因子として認識されつつあります。

血糖値が云々、インスリンが云々、血圧が、心臓が、アルツハイマーが、癌が・・・と問題は山積みになるばかり。

しかし！

全ての問題、特に生活習慣病と言われるような問題の中核はただ一つであり、それ以外は枝葉末節です。

問題の中核は次の一文で表すことができます。つまり、

「人類はアナボリズムに対して無防備である」

ということです。

カロリー面を見ると、人類を含め、多くの動物は飢餓にさらされ、それに耐えることがダーウィニズムにおける「ふるい」として機能し、進化して来ました。

だから、餓死に対抗する装備には、無限ともいえる大自然の叡智が宿っています。

ところが、過食の悪影響については防備が不十分であるどころか、「過食って何？」というレベルなのです。

身体は、食糧がふんだんにある状態でさえ、次の飢餓に対する準備フェイズとしてしかみなすことが出来ません。

人体には永年の進化を経て培われた、真の叡智が宿っています。

しかし現代人は、その叡智を、ごく最近の知見で制御しなければならないという、かなり頭でっかちな生き方を強いられているのです。

人類を蝕む最大因子は進化上の盲点そのものであると言えるでしょう。

■ 腐ったミカンの論理

トレーニングを休むと、身体がリセットされて、トレーニング前の筋量に戻ろうとします。

これも筋量を減らしてカロリーを節約しようとする仕様の一つで、飢餓対策であると言えます。

動物の多くは飢餓に耐えることを通して、あらゆる進化を遂げてきたことから、進化の叡智は飢餓状態で発揮される、と言っても過言ではありません。

お腹が空いた状態を放置することは死を意味します。空腹をどうしても解消しなければならない状況において、サバイバル本能が最大限に発揮されるわけです。

お腹が空くと、感覚が鋭敏になり、思考がシャープになるばかりでなく、食糧を得るモチベーションがあるかどうかなどは問題外となります。

だから英語では「ステイ・ハングリー」とか「ハングリー精神」とかいうふうに、その飢餓状態を意識的に利用することわざがあるわけですね。

飢餓状態では、大ざっぱに言ってサバイバル本能が露わになりますから、「断食が長寿につながる」というのも、それはそれで正しいと思います。

栄養素やサプリメントで「健康効果」が立証されているものを調べてみると、結局のところ、「アンチ栄養素」であることが少なくありません。

つまりその栄養素を摂ると、摂取カロリーがあたかも「帳消し」になるかのような現象を起こすわけです。

例えば、関節サプリのグルコサミンは、ワームやラットで延命効果が認められています。

その原因を調べてみると、どうも解糖系の代謝を阻害することが理由であるらしいのです。

代謝を阻害することでエネルギー不足を引き起こし、それがサバイバル本能を呼び覚ますわけです。

さて、カロリー不足状態には、サバイバル本能覚醒の他に、自分の組織を燃料として分解するという現象が必ず伴います。

この自食(オートファジー)が、図らずも、現代社会においては、最強の遺伝子治療となり、成人病予防となることは、あまり宣伝されていません。

自食(オートファジー)は免疫システムの一つでもあり、変性した細胞などを分解して栄養にすることで、身体の統合を健全に保っているわけです。

カロリー不足で、自分の細胞のどれかを燃料として燃やさなければならない・・・。

そうなった時に真っ先に犠牲にされるのは、変異したり糖化したりした、ロクでも無い細胞たちです。

このプロセスが成人病予防につながります。

飢餓状態においては、個体間でも、体内でも「適者生存の掟」が遂行されるわけですね。

こういった環境の「ふるい」無くして進化はあり得ません。

サバイバル本能を覚醒させることで、身体は、エリート細胞集団へと収斂してゆくのです。

ちょうどこれは「腐ったミカンの論理」の如く、箱一杯のミカンの中から、腐ったものだけを捨てて行く作業にあたります。

一部の腐ったミカンを放置しておくと、箱全体が腐ったミカンになります。

腐ったミカンが放置され、ダメージが増進してゆく様は、ほとんど全ての成人病や老化になぞらえることが出来ます。

カロリー過多の状態では、オートファジーの緊急性・必要性が低下しますから、結果として腐ったミカンが増えることになります。

人類を含めた動物にとって、カロリー過多が永年継続するという状況は、未曾有の事態であり、全くの未知に等しい状態です。

それが故、カロリー過多から来る不具合を、初期段階で防衛する機能が無いのです。

■ カタボリズムの効用

24時間程度断食したところで、筋肉は落ちません。

むしろ、変異した組織をクリーンアップするシステムがオンになり、成人病予防、アンチエイジングにつながります。

それだけではありません。

定期的に断食を繰り返すと、カロリー不足による組織損失を補うため、あらゆる組織で萌芽細胞の発現が亢進するのです。

アナボリズム状態を継続すると、栄養摂り込みの面においても(インスリン抵抗性)、萌芽細胞の面においてもダウンレギュレーションが発生して筋発達はプラトーを迎えるでしょう。

その上、栄養過多状態からくる疾病には、免疫システムは比較的無知ですから、『バルクに埋葬される』率も高くなります。

アナボリズムとカタボリズムを交互に繰り返す様は、例えて言うなら、マクドナルドが収益の悪い店を閉めたり、売り上げの伸びない地域から撤退するのがカタボリズムであり、収益の良い店や発展している地域に、より多くの力を注いでいくような方策がアナボリズムというイメージです。

ですから、アナボリズムも、カタボリズムも、どちらも非常に重要と言えます。

ボディビルディングにおいては、カタボリズム期を取り入れることで、レセプターを鋭敏にし、細胞を選りすぐり、萌芽細胞を増やして増量期に備えるほか、身体を若々しく長持ちさせる効能が期待できます。

コンテスト前の減量はカタボリズムであり、その効用も確かにあるでしょう。

しかし、長期にわたってどちらかの状態にしか居ないというのでは、大した効果が期待出来ないようです。

アナボリズムも、カタボリズムも、計画して有効利用したいものですね。


(じゃあまたね)

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