この間、改めて以下の書籍を読みました。
「シェアする美術 森美術館の SNS マーケティング戦略」
洞田貫 晋一朗
さんはもちろんご覧になったことはあるかと思いますが、森美術館様の SNS の取り組みがその背景や思想とともに書かれています。
弊社でも過去に開催した「無料インバウンドセミナー」で SNS の活用法についてはご紹介していました。
「何から始めればいい?ミュージアムのインバウンド対策」
この著書でも以下のようなことが書かれています。
いくつかご紹介します。
「森美術館は、全体のおよそ70パーセントが 10~30代の若い来館者なのです。40代も加えると、80パーセントを超えます。この世代は1日当たりのスマートフォンの利用時間が長く、ソーシャルメディアを活発に利用している層です。」
いずれにしても森美術館ではこの「来てくれる層」にターゲットを定めて、プロモーションを行っています。
「ツイッターのプロフィール欄のリンク先は、以前は公式サイトにしていたのですが、現在はインスタグラムにしています。」
「先ほども述べたように、SNSの投稿で重要なのは、一対一のつながりを意識しながら相手に話しかけるように伝えること」
これまではウェブサイトが「主」で、SNSが「従」でしたが、すでに構図が逆転していることを、理解しておいていただきたいと思います。
「美術館のプロモーションが目指すゴールは、あくまでも「来館」です。SNS を見たことで、どれだけ来館してくれたかが重要であって、狙った面白い投稿がインターネット上で大量拡散中だかとか、「中の人」のキャラクターがウケているとか、それは途中の評価にすぎません」
いかがでしょうか。森美術館様の SNS に対しての一貫したスタンスが垣間見えますよね。
良いか悪いかは別として、この戦略→戦術が効果を出しているのは間違いありません。そうでなければ19万人ものフォロワー(Twitter/Instagaram)はつきません。
ただやはり SNS にしても Web サイトにしても、「その館のファンにとっての正しいコミュニケーション方法」をしっかりと見定めて実施することによって、正しい結果が生まれているのだと思います。
「とにかく安く、大量にドンドン発信していく」というスタンスが悪いわけではありませんが、やはりそれは広告くさくなってしまいますし、ファンはついてきません。
①自館がどうなりたいのか理想の状態を設定(ゴール設定)
②ターゲットの設定
③具体的な施策の決定
④運用、改善
のサイクルを愚直に繰り返していくことで、多くのフォロワーに支持される SNS アカウントが作られるのでしょう。
来館を目的にすると、どうしても「宣伝」「PR」という気持ちが強くなってしまいますが、そのエゴをグッとこらえ、ファン育成に集中するという方法が館の統一見解として取れるかどうかが重要になります。
結局のところ「ファンとの関係性を正しく構築」し「基本情報を丁寧に発信する」というスタンスが重要ということでしょう。
※ただし、これはあくまで森美術館様のマーケティング戦略なので、 さんの館でそのまま採用すればうまくいくというものでもないでしょう。
逆のやり方(中の人のキャラを立たせたり、インフルエンサーを採用したり)でも上手く行っている館もあります。
どのやり方を選ぶのかは、冒頭の「どうなりたいのか」と「どんな人に見てもらいたいのか」をしっかり考えなくてはならないということです。
ひとつの成功事例として参考になる部分も多いので、もしまだ読んでいないようでしたら
ご一読をお薦めします。