今回は木賊色。
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「こらっ、また着物広げて寝てっ。」
ハッと顔をあげると、怖い顔をしたおばあちゃんがいた。しまった、こっそり見る予定だったのにと思った時にはもう頭にチョップを食らった。
「ごめんなさい」
「ごめんなさいごめんなさいって毎回言うけど、わかってないでしょ、いつもこんなに散らかして!」
祖母がテキパキと箪笥に着物を畳む姿を見ながら、「だって…着物の匂い好きなんだもん」とねだってみた。
「いいかい?この着物は反物から仕立ててもらって100万、帯60万、長襦袢60万、伊達締め10万…今のお前がいくら逆立ちしたって買える額じゃない、もし汚しでもしたらお前の父親に弁償してもらうよ」
ついこのあいだ万の位を習ったばかりだが、お菓子を我慢したからといって到底買える額ではないことは理解できた。しかし。
「なにさおばあちゃんのケチ。大人になったら譲ってあげるよーくらい、可愛い孫に言ってもいいのに」
「ふん」
おばあちゃんはそう言うと、着物をしまっていた箪笥の上の段を開けた。
「この安物ならやってもいいね」
「えっ」
出てきたのは子ども用の深い緑色の着物だった。
「まだ着付けできないだろうから私が着付けてやる。おいで」
「おばあちゃん!」
「ぐえっ、こ、ら、青嵐、苦しい…」
一転して心踊った私がおばあちゃんの首を抱きしめ、またチョップを食らう羽目になったのは許してほしいと思う。
15:木賊色
「本っ当に騒がしい子だよ、誰に似たんだかねぇ」
「おばあちゃんだったりして」
「おだまり!」
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口のへらない子どもと祖母。
昔「青嵐」さんに出会ったことがありますが、今回お名前だけお借りしました…怒られないかな…ビクビク。